2010年01月19日

Cremona Violins: A Physicist's Quest for Secrets of Stradivari ようやく出版

アマゾンで見つけて、予約注文しておいたCremona Violins: A Physicist's Quest for Secrets of Stradivariがようやく出版されました。足掛け3年くらいか?
内容的には当初予定と大幅に変更になっていて、相当苦労した後が伺えます。当初予定と異なりDVD付きになり、物理学者William F. Fryの板の厚さがどう音に影響するかの解説が入っている(らしい まだDVDは見てません)


Cremona Violins: A Physicist's Quest for Secrets of Stradivari

Cremona Violins: A Physicist's Quest for Secrets of Stradivari

  • 作者: Kameshwar C. Wali
  • 出版社/メーカー: World Scientific Pub Co Inc
  • 発売日: 2010/01/03
  • メディア: ペーパーバック




Contents:

* Luigi Tarisio and the Violins of Cremona
* The Rise and Fall of the Cremonese Art of Violin Making Antonio Stradivari (1644c–1737)
* The Anatomy of a Violin and the Mechanism of Sound Production
* Some Historical Notes on Violin Research Over Centuries
* William F Fry and His Quest for the Secrets of Cremona Violins
* Myth and Reality of Cremona Violins, Fry's Violins
* A Convergence of Science and Art


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2009年09月23日

クレモナのクラシックバイオリンとモダンバイオリンの木材密度の違い

StoelとBormanの論文のアブストラクトだけ翻訳してみました。
この論文は、クレエーティブコモンズというオープンドキュメントのライセンスで公開されています。
書誌情報は下記。

Stoel BC, Borman TM, 2008 A Comparison of Wood Density between Classical Cremonese and Modern Violins. PLoS ONE 3(7): e2554. doi:10.1371/journal.pone.0002554

ストラディバリやグァルネリなどクレモナの巨匠たちが制作したクラシックバイオリンは、音の表現力や到達力の指標(ベンチマーク)となっています。彼ら以降、どんな製作者も彼らのクラシックな楽器たちと並ぶ音質を作り出せていないと言われています。

バイオリンの振動と音の放射特性は、楽器の形状と木材の特性によって決まります。新しい測定方法によって、木材特性の鍵となる木目一本にいたる詳細な密度の非破壊的な検査が可能となりました。本論文では、5本のクラシックバイオリンと8本のモダンバイオリンの密度を、コンピュータトモグラフィと特別に開発された画像処理ソフトウェアを使って比較しました。

モダンバイオリンとアンティークバイオリンの平均密度には大きな違いは見られませんが、クレモナのクラシックバイオリンでは、表板のスプルース、裏板のメープルともに、モダンバイオリンと比較すると、夏目と冬目の密度差が非常に小さいことが分かりました。(それぞれ p = 0.0028 と 0.008)モダンバイオリンとクラシックバイオリンの表板の密度差(SE)は、それぞれ 274(26.6)と183(11.7) g/Lで、 裏板の値は、128(2.6)と115(2.0) g/Lでした。

これらの密度差は、剛性分布の違いになるので、この特性は、振動効率に直接的な影響を与えます。また、間接的にはダンピング特性の違いに寄って音の放射特性を変化させると思われます。

これらのメカニズムがクラシックバイオリンとモダンバイオリンの音響の違いの理由となっている可能性があります。
posted by い〜ぐる at 07:00| Comment(10) | TrackBack(0) | バイオリン製作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月09日

魂柱の位置

魂柱の位置は、微妙だ。楽器ごとに最適な位置が違うことが知られているけど、そもそも、最適って何というのもはっきりしない。

調整のスタート段階の魂柱の位置は、バイオリン製作関係の本いくつかの間で、全然意見が違ったりする。(どれが正しいの?)

手元にある本を調べて、魂柱とブリッジの距離の初期値が書いてあるものを集計してみた。


位置出典
COURTNALL2-3mmThe Art of Violin Making
WAKE4.75-6.35mmTechnique of Violin Making
川上6mmヴァイオリンをつくる (新技法シリーズ)
OSSMAN1cmViolin Making: A Guide for the Amateur
STROBEL3mmViolin Making: Step by Step
ATRIA魂柱の直径の半分Violin Repair Guide: Illustrated Step-by-Step Instructions for Bow Rehairing, Repair and Restoration of the Violin, Viola, Cello and String Bass
HERON-ALLEN≤ 6.35mmViolin-Making: A Historical and Practical Guide


い〜ぐるは、主として、最初に買ったCOURTNALLの方法にそって作業しているので、かなりブリッジに近いところに配置している。

これだと、全体平均(って意味があるか?ですが)、からみて、ずいぶん近い。
posted by い〜ぐる at 08:01| Comment(0) | TrackBack(0) | バイオリン製作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月11日

ストラディヴァリのF字穴の設計

昨年、某所を訪問した時、ストラディヴァリのF字穴の設計に関するStrad Magazineの過去記事がネットで見られると聞いた。

Alvin Thomas King氏の
「How Stradivari Positioned the F Holes」
だ。

この資料、著作権の問題から、内容を詳しく書くことはできないが、ストラディヴァリのヴァイオリンやチェロは、板を固定するピンの間隔を基準として、黄金分割比で決るいくつかのパラメータを元にF字穴の位置を決めていたということらしい。

アマティやグァルネリも黄金分割で位置を決めていたが、彼らの方法(アマティ流)とストラディヴァリの方法は1690年代から微妙に変ったということだ。おそらく、この頃、ストラディヴァリが新しい方式での設計を開始したのだろうと記事は書いている。

この法則を既存のストラディヴァリのバイオリンたちの計測データを比べるとほとんどピッタリ一致する。

しかし、資料の最後にも書いているが、なぜ、ストラディヴァリはピンを基準にF字穴を決めたのだろう?

ピンの位置も、おそらく決った手順の中で割り出しているのだと思うが…

ところで、現在のイタリア流は個性を出すために、あえて再現性に目を瞑っている気がするが、ストラディヴァリの仕事の仕方を調べていくと、彼が非常に工学的な再現性を重視した手順を求めているような気がする。

再現性は同じものを作るためだけではなく、改良のためのデータとしても必要なのだ。もちろん、これでOKという設計ができたら、その再現性が重要なことは言うまでもないが。

彼は1700年代になってから、同じ楓の丸太から取った裏板をずっと使っていたという情報もどこかで読んだが、その時期が黄金期であるというのは、同一の材料を使い再現性に優れた手法を用いて改良した結果であるかも?

そういえば、グァルネリファミリーも表板に同一のスプルースを使い続けたという記事を読んだことがある。記事によると、彼らのヴァイオリンは、ある場所に暗い模様がついているのが特徴ということだった。(もっとも、自分が持っている資料にはその暗い模様はよく分らなかったが…

材と手法、どちらも大切である。特性の揃った材を継続的に入手できたのが、ストラディヴァリの1700年以降の黄金期であるし、グァルネリファミリーであったとすると、彼らの秘密の一つが見えるような気がする(かも)?
posted by い〜ぐる at 10:05| Comment(0) | TrackBack(0) | バイオリン製作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月24日

釣り糸で弓を♪

弓の毛は馬の尻尾を用いるのだが、同じような太さの釣り糸で代用できないかと思っていたが、ヤマハの楽器解体全書の実験でも使えそうという結果も出ていたこともあり、実際に釣り糸に毛替えしてみる。

2号のソフトナイロンの釣り糸を用意。
75cmの長さで120本を切り出す。

IMGP0798.jpg

普通の毛替えと同様にフロッグに釣り糸をセット。

IMGP0801.jpg

毛替え台を自作(先端は自作、フロッグ側はボール盤の万力で代用)し、クランプで台に固定して、先端側のクサビをセット。

IMGP0802.jpg

最後に、松脂を塗って完成。

IMGP0803.jpg

音色は、少し明るめだが、馬の毛と遜色なく十分使えそうだ。
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2008年03月01日

製作関係の本

ブルックリンのバイオリン製作者Sam Zygmuntowiczがバイオリニストの要請を受け、彼のストラディバリと同等な新作バイオリンを作るドキュメンタリー。


The Violin Maker: Finding a Centuries-old Tradition in a Brooklyn Workshop

The Violin Maker: Finding a Centuries-old Tradition in a Brooklyn Workshop

  • 作者: John Marchese
  • 出版社/メーカー: Harpercollins
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: ハードカバー




果たして、Sam Zygmuntowiczはストラディバリ相当のバイオリンを製作できたのか・・

次に紹介する本は、レビューがどこにもないので、内容は良く分からないが、おそらく1864年の本の復刻版?


Notice of Anthony Stradivarir: The Celebrated Violin Make

Notice of Anthony Stradivarir: The Celebrated Violin Make

  • 作者: Francois-Joseph Fetis
  • 出版社/メーカー: Music for Strings
  • 発売日: 2006/01/30
  • メディア: ペーパーバック


posted by い〜ぐる at 09:42| Comment(0) | TrackBack(0) | バイオリン製作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月28日

茜色の染料

ストラディバリはニスの色付けに茜の染料を用いたとSacconiの本には書かれていた。そこで、茜の色素、アリザリンを入手して、茜色の抽出を試みた。

アリザリンとアルコール、魔法のポーションをジャムのビンに入れて、よく振っておく。一日放置して、上澄みの色がかなり色濃くなってきた。

棚に並んでいるのは、ニスの材料たち。
右から、アリザリン、紫根、さだらのき、カテキューである。

DSCN0992.JPG

これだと真っ黒にしか見えないので、ライトを透かして撮影してみる。

DSCN0991trim.JPG

かなりいい感じに色づいてきたのではないだろうか?
しかも、透明感も良く出ている。
茜の茜色、まともに使えそうだ。
posted by い〜ぐる at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | バイオリン製作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月26日

バイオリンニスの本

今年出た、バイオリンニスの本がアマゾンにある。



ニスだけで(196ページもの)一冊の本になるというのもすごい。

気になっている本に、もう一つ、ビオラとバイオリンの製作本↓もある。


資料収集も大切だが、作業を進めるのもやはり大切ダヨネ(笑)
posted by い〜ぐる at 12:52| Comment(0) | TrackBack(0) | バイオリン製作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月24日

ストラディバリはホウ砂で防虫?

2〜3年前のことになるが、アメリカの研究者Nagyvaryがストラディバリのバイオリンにホウ砂が使われていたことを確認したという記事が出ていた。

ストラディバリの謎の探求

記事によると、ストラディバリの時代のクレモナはキクイムシが大発生して、木材商たちが防虫のためホウ砂を処方したということだ。

Sacconiの本に出ていたものに加え、ホウ砂を使うのも一考の余地がある。ただ、木材商たちが原木に加工したのか、ストラディバリが自ら行ったのかは不明であり、もう少し研究の余地がありそうだ。
posted by い〜ぐる at 16:04| Comment(0) | TrackBack(0) | バイオリン製作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月09日

Stradivariの本

300年も前の楽器についての本が未だに出てくるというのは、すごい。

まず、こちらは2006年の出版の本。


こちらは、予約受付中ということだ。


(近日発売となっているが、2008年4月が発行日になっているんですが・・)

Sacconiの本も読みきれていないが、上の2冊はペーパーバックなので、Sacconiの大型本と違い、電車の中でも気軽に広げられる(し、値段も安い 笑)ので、とりあえず、注文してみよう。
posted by い〜ぐる at 11:26| Comment(0) | TrackBack(0) | バイオリン製作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする